ハンガリーさんの告白 「ハンガリー」 私を呼ぶその声が好き。 首元を緩めるその仕草も、カフスを外させてくれるその視線も。 私を抱く、見た目よりずっと逞しい腕も、見つめる瞳も、そのきれいな指先も。 何度も交わしたはずの行為で、いつもまるで初めてのときのように、丁寧に私を導いてくれる彼の心も全部、全部。 「オーストリアさん……」 私の彼を呼ぶ声は、いつだって気持ちが昂ぶりすぎて、少し震える。 それを誤魔化すように、囁くように息を乗せると、彼は優しく――少しだけ揶揄するように――私の耳朶に唇を寄せた。 「……どうしました?」 分かっているくせに。 やめますか、とすら、空気を震わせて甘く囁く問いかけはサディスティックで、私は彼の首に腕を回して引き寄せると、眉を顰めて睨み上げた。 「オーストリアさん、意地悪、です」 「……おや、心外ですね」 口角を上げて視線を細める。楽しそうな彼の口調と表情に、私は背筋をゾクリと震わせた。 「御仕置してほしいんですか?」 言いながら、私の頬を包みこむその掌の大きさが好きだ。 鍵盤をを弾く音楽家の指先が、私の髪を梳いて絡めて、乱していく。 優しく熱く、そして強く私を奪う唇も好き。 「……ハンガリー」 汗ばむ体も、熱を帯びてくる呼び声も。 胸に肩に首筋に、短く吐き出す呼吸の仕方も。 吐息ですら私を奪うのだから意地悪。 普段きっちりと纏め上げられている彼の髪を乱すのが、私であることが誇らしい。 そうすれば意外と幼くなる彼の、少し拗ねたような表情が好き。 彼に下から手を差し込んで髪に触れて、頬をなぞって、強請ると応えてくれる彼が好きだ。 私を見つめる彼の全てが放つ色気を、自慢したくて独占したいジレンマに駆られる。 普段と違う彼の声が、熱を欲す私の体が、二人だけの常識が愛しい。 「……」 「……ん」 眦から溢れた涙を唇ですくわれる。 額に、頬に、鼻に、喉に。 唇までのもどかしい距離が、胸を甘く疼かせて、頭が痺れる。 もっと、とせがんで名を呼ぶ前に、激しく深く、彼が全部を飲み込んでいく。 御仕置という単語で萌えを感じさせられるのは貴族のすごさだと主張し隊。 |