彼女の笑った顔があまりに可愛かったから。


Kus and Kus


少し屈んで触れた唇を離すと、目を丸くして驚いた顔のハンガリーの視線とかち合った。
「……あ、あの……？」
「目を閉じてもらえますか？」
「へ？」
突然の行為に驚いて目を丸くしたまま私を見つめる彼女に、唇の触れ合う距離で囁けば、間の抜けた声を出して、ハンガリーがきょときょとと瞬いた。
触れた頬を親指の腹で優しくなぞるように動かしてその瞳にもキスを落とす。
「瞬きではなく、閉じたままで」
「え、あの、でも」
「まあ別に良いですが」
「え……待、っんぅ！」
何故か及び腰で肩を竦めるハンガリーに構わず身を乗り出せば、台詞を途中で奪われた彼女が私の胸を押し返した。その手を包むように掴んで、頬に添えた手はそのまま。
驚いてか逃げ惑う舌先を追いかけ、絡めてつかまえる。
角度を変えて何度も何度も。


ハンガリーの椅子に身を寄せていたはずの私が、いつしか彼女の両足の間に膝を割り込ませ乗り上げるように貪れば、彼女から次第に鼻にかかった吐息が漏れて、押し返すために置かれたはずの手が、私の指を求めて動く。 唇を求め合いながら指を絡ませ、頬を髪を撫で回すと、ハンガリーが呼応するように艶っぽい喘ぎで応えてくれた。
しばらくそうして絡ませ啄ばみ、やがてどちらのものか分からないほど混ざり合った熱い息を感じながら舌を離した。まだ鼻と額を擦りつけてままで、ハンガリーが弾む胸を押さえながら途切れ途切れに名前を呼ぶ。
「……オ……オーストリアさん、は」
「はい？」
濡れて伏し目がちの瞳が美しい。
自分のせいでそうなっているとわかるから余計に愛しいそこにもう一度唇を寄せて吸い上げると、ぴくりと体を揺らして、ハンガリーは拗ねたように唇を尖らせた。
「ず、随分……っ、急ですね」
「そうですか？」
今の行為でわかったことは、自分の眼鏡が邪魔になるということだ。
ハンガリーの言葉が本来の抗議でないことは、先程の彼女の正直な唇で知っている。
私は自然と下がる眦を自覚しながら、口角を持ち上げからかうように啄ばんだ。


「では今度はゆっくり」
「え、わ――え、あ」
今しがたあれだけ色っぽく吐息を吐いて私を煽ってくれたというのに、そう言うと急に慌てて顔を真っ赤に染め上げる彼女は確信犯でないだけ困る。
「……貴女は可愛すぎる」
祈りを捧げるようにそう言うと、ハンガリーは耳まで赤く染め上がった。



ＥＮＤ

ただひたすら攻めのオーストリアさんがすごい好きです。
ハンガリーよりオーストリアさんのがいろんな意味でがっついてればいいww
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