1.「あらあら」 傍から見れば丸分かりなのに、当の本人たちだけがまるで別の方向に空回っているのを見るのは、言い方は悪いが、少しばかり滑稽で、そして微笑ましい。 自分の膝に抱かれ、しょぼんと丸められた背中はいかにも意気消沈していて、可哀想には違いないのに、どうしても頬が緩んでしまうのは、何も相手がイタリアだからというわけではなかった。落ち込みの原因が、杞憂だと分かってしまう者の特権だ。 「大丈夫よ、イタちゃん。ちゃんと仲直りできるわ」 「ほ……ホントですか?」 「ええ。神聖ローマも、どうやってイタちゃんに謝ろかなって、一生懸命考えてると思うの」 いつもいつもイタリアを泣かせて困らせてばかりの神聖ローマが、実はものすごく彼を気にかけていることを、ハンガリーも勿論知っている。 そんな神聖ローマのことだ。今頃バレバレの何気なさを装って、オーストリアに和解の打開策を聞きだそうとしている様が簡単に想像できて、ハンガリーは一層の微笑ましさに目を細めた。 「仲直りしてくれるかな、神聖ローマ……」 「もちろん! 神聖ローマ、イタちゃんのこと大好きだもの」 「ヴェー……――えっ!?」 (……あら) ハンガリーが元気付けようと言った台詞に振り向いたイタリアを見て、ハンガリーは軽く瞠目した。ボンッと見る間に真っ赤に染まって、抱きとめているハンガリーの腕にまで伝わってきそうなほどだ。 二人の関係は、イタリアの純粋な兄弟のような親愛と、神聖ローマの淡い片恋だとばかり思っていたのだが、これはもしかするともしかする――。 「……イタちゃん、神聖ローマ、好き?」 「え!? え? や、ぇ、あの、えと……えぇっ!?」 おたおたと挙動不審になりながら、爆発しそうな勢いで茹で上がるイタリアを前に、ハンガリーは確信した。 (あらあら。神聖ローマ、両思い、ね) 目の当たりにした小さな恋心に、くすぐったい温かさを感じて微笑しながら、 「イタちゃん、かわいーv」 「ヴェ〜〜〜!!!」 ハンガリーは、赤くなり続けるイタリアの頬を、つつん、と突いて覗き込んだ。 ちびたりあは本当に可愛い。 |