2.「だめよ絶対だめ」




最近中からも外からもオーストリアさんの周りが不穏な動きをしているようなので、私とイタちゃんでどうしたら、オーストリアさんを助けられるか相談してみました!

                         ↓   ↓

「はい! ハンガリーさん」
「はい、イタちゃん。何かいい案思いついた?」
「……土地をあげる?」
「え、それは、うーん……」
それだと私の国内からも不穏分子が飛び出してくる予感がしちゃうので、簡単には頷けない気が。というか、私って今ほとんどオーストリアさんのもののような気がするし――――え、あれ? それってちょっと……わ、あ、改めて考えると、……分かってる! 分かってるけど、でもでも……

「ハンガリーさん? お顔真っ赤なの、大丈夫?」
「だだだ大丈夫よ! ちょっと耳元でオーストリアさんが――ううん、なんでもないわ」
ぶるぶると頭を振って、邪念を追い払う。とりあえず土地関係は、やっぱりお互い上司の意見もあるしということで置いておいて。

「……どうしたら、みんな戦わないで仲良く出来るのかしら」
確かにこの国は元々欧州の寄せ集めみたいなもので、それぞれが別個に国としての力を持っているし――そうであれば、各国で独立の気運が生じるのも自明の理。時期が来ればと、ずっと昔から虎視眈々窺っているプロイセンにすれば、今が絶好のチャンスなんだということも見えてくる。

「独立と侵略は違うと思うのです〜……」
そういうイタちゃんが、悲しそうに眉を寄せた。
この子はお祖父ちゃんと別れてから、本当に色んなことがあって今ここに居て。それでも何度か、脱走やつまみ食いをしてオーストリアさんにこってりしぼられたりもしてるけど、その言葉が示す通り、狡猾さで攻める子じゃない。
かくいう私も、昔は色々あったし……盗んだバイクで走り出したり、ナイフみたいに光ってみたり。思い出はセピア色なのに、申し訳なくなってくる。
しんみりとした雰囲気になってしまった私に、イタちゃんがぽん、と手を打った。

「ヴェー! ハンガリーさんはどうなんですか?」
「え、私?」
キラキラとした目が向けられる。
「はいっ。ハンガリーさんとオーストリアさんはどうして仲が良いんですか? 他のみんなと同じような境遇なのに」
「それは――」

彼が、昔私を囲って好き放題にしたオスマントルコとは違って紳士だったことや、上司たちの政策的な問題や協力、それに私がシシーの涙ぐましい嫁姑問題のオアシス足りえたことや、姻戚関係……その他諸々が微妙に深く絡まりあっていて、一概には言えないけど、でも――。



「…………から?」



――私が、オーストリアさんを好き、だから?
ぽつりと無意識に呟いてしまったことに気づいたのは、イタちゃんがぱぁっと顔を輝かせて、身を乗り出してきたからだ。
「ヴェー! じゃあ、みんながハンガリーさんみたいに、オーストリアさんを好きになればいいですね!」
名案とばかりに声まで輝く。
「え……みんなが? 私みたいに?」
「そうです! そしたらみんなもっと仲良しに――」
みんなが……イタちゃん、は、今はいいとして――プロイセンが? あのフランスが? もしかしてイギリスとかもありなのかしら。とにかくみんなが、私みたいに、オーストリアさんを…………?





「――却下!!」
「ヴェー。どうしてですかハンガリーさん〜。あ、またお顔がとっても真っ赤に……」
「却下! オーストリアさん守りましょう! 死守! 断固死守! イタちゃんも頑張って! ね!」
「ヴェェ〜?!」
そんなのオーストリアさん、今より大変なことになるじゃない。
だめよ、絶対だめ。



END


腐女子ハンガリーもめりっさ可愛い。
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