ONLY ME 〜first sentence〜
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「……っ、は……あっ」
「……リ、ザ」


ベッドサイドに無造作に投げられたロイのシャツが、するりと床に落ちた。
背後からかき抱くようにして汗ばんだリザの肩に噛み付くようなキスをする。
スプリングの軋む音。


「――ふはッあ、ん!」
緩慢な動作から一転、最奥を突くように動かせば、耐え切れずに甘い嬌声がリザの口をついて出る。
が、すぐに押し殺したような声音で小さく艶めいた吐息を咽喉の奥で堪え始める彼女の
シーツを手繰る指に己のそれを絡ませると、ロイは一旦動きを緩め耳元に囁く。


「声を」
「……ヤ……で、す」
言う事を聞かないいつもの返事にお仕置きとばかりに体を反転させると唇を塞いだ。
ロイの胸板を僅かばかりの抵抗で押し返そうとする手が震えている。
それに満足を覚えそのまま再び律動を開始すれば、声を抑えるためかリザの方から積極的に舌を絡ませてくる。
シーツの波がよれて乱れて、捲れあがる。


ロイの激しい律動に思わず引き腰になりながらも、押さえつけられ逃げることは叶わず。
このまま縋りついて鳴いてしまえば落ちるとこまでいってしまう気がして、リザはロイの胸から手を放すと
枕もとのシーツをしっかと握り締めた。
閉じた瞳から生理的な涙が零れ落ちる。



――――怖い。



女の本能はロイを求め受け入れ、しかしリザの理性がそれに身を委ねる事を禁じてしまう。
終わりが見える行為に馬鹿みたいに没頭して後に残される自分が怖い。
瞳をかたく閉じていれば、熱い視線で己を求めるロイの視線を見ないですむ。
一度囚われてしまえば、それを当然と考えてしまいそうで怖くて見れない。


堪えきれない声が鼻の辺りから甘く抜けるような音を立てるのを聞きながら、リザは瞳を固く閉じた。
こうすれば、ロイを求めて止まない欲望に塗れた本心を悟られないですむ。
合わせられない。
見てはいないのに、頬を挟むロイの熱く大きな掌を感じて、シーツを掴む掌に力を篭めた。


「……リザ……」


ロイが熱のこもった声音でリザの名を呼び、目尻に口づけて雫を奪う。
いつもいつもいつも。


達しそうになる瞬間、彼女自身はロイを締め付け奥へ奥へと誘い締め付け受け入れるのに、
リザはそれを否定するかのように視界を閉ざす。
もっと欲しいと貪欲にしがみ付けば良いものを、いつも体ごと求めているのはロイだけで、
リザはシーツに解放を求めている。


体を許すのはロイだから。
それは絶対間違いではない、ロイはそう確信している。
だがしかし、どの感情がリザにそうさせているのか自分の下で翻弄され熱に浮かされた身体をどれだけ拘束しても
判然としない。苛つく。




首筋にきつく噛み付いて、紅い刻印を刻み付ける。消えないように。感じるように。




「――っう、く…はぁ、ん!」
きゅう、と蠢くリザに猛る想いごと流し込んで、ヒクつく彼女を抱きしめた。

















「退いて下さい。重いです」
「……君ね……こういうときは余韻を楽しむのも礼儀じゃないかね」
「それは失礼しました」


温もりを逃がさないようにリザを抱きしめていたロイに素気無い言葉が投げられた。
言いながらロイの下から這い出すと、リザは寝返りを打って背を向ける。
ロイの口から音にならない溜息が零れた。


どうして彼女は抱かれるのだろう。
行為の最中拒絶はせずにしかしロイを求めはしない。
終わってもこうして一つのベッドにいる事すら稀だ。
それでさえ背を向けて今までの行為を否定するかのような態度をとる。


「リザ……」
背中から抱きしめ項に唇を寄せれば、抵抗しない彼女の腕が胸にまわるロイの手に触れた。




ONLY Me   >>> 1



とりあえずオープニングです。
続きます。

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