もしもシリーズ <4,ホークアイ中尉が倹約家だったら>
そろそろいつ空から白いものが舞い降りてもおかしくない気候が続いている。 まだ氷点下にはなっていないが、それも時間の問題だろう。 司令部では暖房がたかれているし、ロイの自宅でもそうだ。 ロイだけでなく、普通はそうだ。 なのに。 「あー……リザ?」 「はい」 「少々肌寒くないかね?」 「そうですね」 リザの部屋では息が白い。 昼日向、日光が入り浸る窓辺でくつろいでいるわけではなく、既に深夜と呼べる時間帯。 本音を言えば『少々』ではなく『かなり』寒い。 「暖まりますか」 「…風呂の湯ならさっき抜いたぞ」 「違います。ベッドで」 ……そういうお誘いなら大歓迎だ。 悴んだ末梢神経もすべらかな大腿に這わせればすぐさま内部から温もりを取り戻す。 そのためのムード作りに多少の難があるのはこの際多めに見よう。先に行ってて下さいと言われるまま寝室で待てば、気分だけで寒さが和らいだ気さえしてきた。 「お待たせしました」 「――それは?」 漸く戻ったリザの腕に抱かれているそれに目をやって、ロイは真意を計りかねてしまった。 「体に巻くんです」 「……どんな意味が?」 知らないプレイだ。 さも当然とばかりに渡されて、わけも分からず受け取る。 体に巻く?コレを?……黒くならないか? しばし首を傾げ立ち尽くすロイに気づいたリザがその手から抜き取り、徐に広げるとそれで器用にロイを包んだ。 そのまま優しくベッドへ誘導されて、布団の中へ。 「新聞紙には保温効果があるんですって」 ……そんなに嬉しそうに微笑まないでくれたまえ。 体の前に、目頭が随分熱くなってきた。 |