which do you like ?

「ブロンドとブルネット、どっちが好きっスか?」

突然問われた言葉の真意を掴みかねるといった表情で彼女が答える。

「別にどちらでも構わないけど…何?」
「どっちかってーとっていうのないんスか。ほら、好みのタイプってやつ」
「好みのタイプねぇ…髪の毛の色で選んだことはないわね。ハボック少尉は?
どちらがお好み?」

――私の知る限り、ジャンの恋人に統一性はないんだけれど。
強いて言うなら標準以上の外見……あら失礼。これじゃあただの面食いみたいだわ。
そう言ってクスクス笑う彼女の姿はめったにお目にかかれない。
やっぱ休憩時間って貴重だわ。

「俺?うーん…やっぱブロンドっスかねぇ」
「そうなの?」
「あ、でもブルネットもオリエンタルな雰囲気でそそられますけど」

どっちでもいいんじゃない!
俺の言葉に思わず吹き出してしまった我がいとしの上司を見て、憮然と答える。

「あ、中尉。今俺のこと節操なしとか思ってません?」

そこまで思ってはいないんだけど、と言いつつまだ肩震えてるっスよ。

「どっちも好みなのよね」

目尻を抑えて言ってくるので、まあね、と返した。
でも、と付け足す。

「ブロンドはセックスシンボルっスから」
「金髪碧眼?」
「そーそー。ナイスバディーなら言うことなし。
思わず見ちゃうのは仕方ないっスね」
「あら残念。ブロンドまでしか当てはまらないわ」

ライトブラウンの瞳じゃ何点減点されるのかしら、
とわざとらしく肩をすくめてみせる彼女にちょっと真面目な口調で

「中尉はただでさえ美人っスから。それで丁度満点ですよ」

一瞬キレイな瞳を瞠って、それから少し照れたように礼を言う。
……いやだわ、どっかの誰かみたいに口がうまくなっちゃって……
という言葉も忘れていないけれど。

「金髪碧眼にナイスバディー…なら、貴方は完璧ね、ジャン?」

背も高いし言うことないじゃない。
お返しとばかりに満面笑顔で言われたら、いやでも心臓がうるさいんですけど?

「ナイスバディーっスか」
「ナイスバディーよ。綺麗な筋肉のつき方で」
「筋肉好き?」
「というより、男性の骨太なところが」

おお。意外な発言。
要するに男の体が好きなわけ?
発砲されるの覚悟で聞いたら、あっさり肯定された。
これまたびっくり。

「柔らかくないところが好き。女よりいちいち太い骨が好き。
胸板や鎖骨の辺り、腕の筋肉のつき方も好きね」
「……マニアックですね」
筋肉…いや、骨格フェチ?
「そうかしら」

綺麗じゃない?
本気で疑問符貼り付けた顔で覗き込まんで下さいよ、マジで。
俺男なんスから、そんなところに欲情しませんて。
つーかアンタちょっとその顔無防備すぎ。
自分の台詞の艶っぽさ、全然意識してないんでしょうけどね。
場所が場所ならヤバイっすよ?って今も二人で夜勤なんスけどね。
あーあ。でもやたらと具体的だよな。
もしかして――

「彼氏の触るの好きですか」
「―――え」
「…………」
「…………」

オイオイ、否定しないんスか。


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