悩みどころ




●よしよし、と褒めるために、頭を撫でるのは大丈夫。

いたずらに掻き回すような触れ方には、もう と唇を尖らせて睨んできたりもするけど、まあ、概ね問題なし。
「…先生って、私の髪好きなの?」
「んー?そだね。好きヨ?」
きょとんと見上げてくるのに微笑して答えれば、
「……えへへ」
「なに。どしたの」
「ううん。なんかちょっと嬉しいなーって」
そんなことを言って照れたように微笑み返され、思わず手を離してしまった。


●差し出した手もちゃんと取られる。

「ほら、サクラ。もう帰るよー」
「あっ待って待って!先生早いー!」
小走りで駆けてくるサクラに差し出した手は、何の躊躇いもなくがっちりと取られて、素直に繋がれた手に、さすがに苦笑してしまう。これではまるで、父と娘…はないにしても、兄と妹の関係のようだ。
「ねえ先生」
「んー?」
「恋人繋ぎって知ってる?」
「なにソレ」
「こうするの」
両手でオレの片手を持って、一本一本指を絡めて繋ぎ直す。
指の付け根に感じる暖かさと、親密さを増した密着度が高まった。
「こんなところ里のみんなに見られたら、サクラ困っちゃうねー」
冗談ぽく聞こえるように、わざと繋いだ手を振ってみれば、きゅ、とサクラの指に力がこもった。
そんなことをしてくるから、オレは出方に大いに困るのだ。
「先生やっぱり私とじゃイヤ?」
「……ん?……えー、いや、だからサクラがね……」
意味深な発言は無意識なのか、試されてるのか。
それとも紅直伝の色の修行か何かなのか。
サクラの真っ直ぐな視線を避けて、オレは背中に汗が流れるのをしっかりと感じた。


●たまには冗談混じりで腕も絡めてきたりして。

「こーしてると恋人に見えたりして」
「まあなくはないけど、いいとこ仲良し兄妹じゃない?」
「先生つまんなーい!ロマンがない!」
「…え、ロマンなの…?」
そこで少し本気でショックを受けてくれるとか、一瞬傷ついたような恋する女の顔をしてくれるとか、それくらいの反応を返してくれれば分かりやすいのに。
サクラはオレに腕を絡めたままで、ぷんと頬を膨らませた。
「年頃の女の子の求めることをわかってないわ」
年嵩の男の考える事だって、全然わかろうとしてないくせに。
オレの腕に押し付けといて何言ってんのこのコは。
大体サクラの喜ぶものって――と考えて、つい先日のナルトと木の葉丸を思い出した。
眉を顰めて、サクラを見下ろす。
「……オレとガイで"おいろけ・男の子同士の術"は絶対やってあげないよ」
「そ、そんなきっついもの誰が求めるかー!!」
しゃーんなろー!と噛み付かんばかりに怒鳴られた。
それでも離されない、腕の所在はどうしたら。



嫌われてない自信はあるが、好かれ方の種類が不明で、ほとほとまいる。



むずかしい年頃はカワユイ。

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