大人の事情は知っている。 たとえば先生が誰か大人の女性と連れ立っているのを見かけたときに。 (あ、新しいヒトだ) それが同僚なのか、はたまた任務か、それともそうじゃない相手の一人なのかが分かるようになってきたのは、たぶん、先生のキスシーンを見かけてしまってからだと思う。 驚かなかったといえばウソになるし、ショックじゃなかったわけじゃない。 ただ、そういえば先生も男だったのよねと考えてみれば、別に不自然でもなんでもない。 シカマルなんかは、ものすごくダルそうに 「…まあ、いろいろあるんだろーぜ?」 そして微妙に誤魔化し誤魔化し言っていたし、ヤマト隊長は 「え…っ!? み、見ちゃったんだ?」 と大げさなくらい驚いてみせた後で、わざとらしく咳払いをしてくれた。 「あー…ウン。先輩は昔からモテる人だから」 だから、の後を濁してしまうのが隊長らしくて、私は子供らしく適当な相槌を打っておいた。 あの雰囲気の男女が何を目的にするのかなんて、わからないほど子供じゃない。 そういう割り切り方があることだって知っている。 ただちょっと驚いたのは、今まで見たことのない無表情に近い先生の、視線が孕んだ男の気配。 私に向けられたものでもないくせに、どきりとして、苦しくなった。 あの時ツキン、と胸が軋んだ気がしたのは、たぶん、「先生」を取られたような淡い嫉妬だ。 路地に消えた二人を追わずに踵を返したあの日から、 ふと視線に入る先生と並んで歩くその隣に、同じ顔ぶれがいないことに気がついて、 今度は何故かほっとしている理由はまだ分からない。 でも実はカカシはストイックだと思ってる派。 |