ねえ、今夜からはじめましょう。(01)




 この部屋でメッサーと過ごすのはもう何回目だろう。

「……っ、あっあっ、めっさ、くん……!」

 高まる絶頂感に途切れ勝ちな声が必死に名前を呼んで、張り詰めたカナメのふくらはぎがメッサーの腰を離すまいと締め付ける。そうすれば見下ろすように顔の両脇に手をついていたメッサーが腰を深く入れ込んで、カナメの上に覆い被さってきた。

「んーっ!」
「カナメ、さん」

 大きな手で頬を一撫でされて唇へ優しいキスが降ってくる。求めるように開けば、熱いぬめりが余すところなくカナメを貪り、脇の後ろへ移動した手で掬うように抱き締めらた。メッサーの動きが、最奥の一番いいところをぐりりと激しく責め立ててくる。

「め、めっさぁく――それ、それダメ、あああっ!」

 すべて暴かれて教えられて、メッサーの動きに従順なカナメの中が、もっと奥へと誘うように蠢き始める。気持ちいい。どうしようもなくい気持ちいい。カナメはメッサーの後頭部を抱き込むようにして小さく「すき」と繰り返していた。それはもうほとんど無意識だった。熱に浮かれたような声で囁く言葉は、けれどいつだって本心でしかない。メッサーが好きだ。メッサーにこうされることが好きだ。初めて肌を重ねたその日から、メッサーはカナメの良い所をいつもちゃんと探して見つけて刺激してくれる。激しさも優しさもひたすらに甘くて、普段他に見せるメッサーからは想像もできないほど、くたくたに蕩けさせられてしまう。もうダメ。頭がおかしくなりそう。

「イッちゃ――!」

 突かれたそこに僅かな理性の最後が剥がれ落ちた。メッサーを身体全部で抱き締めて、びくびくと震えたカナメの全身が張り詰める。その身体が弛緩するまで待ってから、メッサーはまだ硬さをもった自身をずるりと取り出した。蜜に濡れたゴムを素早く外すと、ふっふっ、と短い呼吸音と共に右手でそれを何度か擦りカナメの腹の上へと吐き出させる。ぬちゃりと落ちた白濁液が透明に姿を変える短い間に、メッサーはカナメの臍に入り込んだそれを指先で拭うように広めた。

「ぁ」

 まだ、その刺激でさえも快楽の波を引き戻されそうで、艶めいた声が鼻に抜けるのを止められない。そんなカナメを、メッサーの掌が優しい動きで抱き締める。フライト直後でもあまりお目にかかることのない乱れたメッサーの呼吸が肌に染み込むように落ちてきて、カナメは込み上げてくる愛しさを噛み締めた。けれど身体が落ち着きを取り戻してくると同時に、胸の内で小さな溜め息を一つ溢す。

(また……してくれなかったなあ……)

 こんなことを考えるのはダメなことだとわかっている。メッサーはカナメをこれでもかというほど大事にしてくれているのだから。わかっている。わかっているけれど、でも、と思ってしまうのを、最近のカナメはやめられない。

(良かったのに、今日)

 しても。そのまま。

 一緒に最後までというのはどうやら難しいらしいということは、最近特集の組まれていた雑誌で知った。が、いつも自分ばかり良くしてもらってばかりのようで、行為に馴染んできたカナメの目下の悩みは実は密かに増すばかりだ。
 メッサーとの関係に不満はない。が、そういった雑誌に目を通せば通すほど、少し不安になることはある。

(メッサー君、ちゃんと私に興奮してくれてる……?)

 カナメの反応ばかりを最優先の抱き方をして、欲は必ず外に吐き出すメッサーの優しさを疑うことはないけれど。雑誌の読者体験談にあるような「我を忘れて」や「獣のように」というメッサーをまだ見ぬカナメは、とくんとくん、と鳴る心音の中に迷いが染み込んでいく音を聞きながら、自分を抱くメッサーの背中を抱き締め返してキスを強請ったのだった。






                                    【 ⇒ 】

生存ifで付き合ってるメサカナ。
メッサー君に優しくされ過ぎて、むしろ自分では物足りないのではと不安に思ってしまったカナメさんが色々考えてやらかすお話。
タグはつけていませんがそこはかとなくカナクモ&アラクモ。(