分隊長、猫耳生えたんだってよ。




何がどうしてこうなった。


目の前でそう悪びれた風もなく椅子に腰を下ろしている──背凭れを前にして跨ぎながら──ハンジ・ゾエに、モブリットは、瞬間感じた激しい目眩にふらつきかけた足をどうにか踏み止めた。
無意識の理性が走り、後ろ手に素早くドアを閉める。
「あの……」
「にゃ、というと思ったかバカめ!」
「馬鹿はアンタだー!」
びっと指を突きつけられて、脱力ついでに声を張る。と、ハンジの本来あるべき場所から頭頂部にかけて違和感なく生えている密生した毛のかたまりがピンと上に立ち上がった。
まるで常と同じようにこちらを見上げるハンジには、他におかしなところは見当たらない。そう、他に──
──猫耳が生えていること以外には。


ほとんど短距離走の速度でモブリットがここ、ハンジ・ゾエの私室に駆けつけたのは他でもない。非番であったモブリットが久し振りにのんびりと昼食にありついていた時の事だ。
同班で紅一点の部下から息せき切ったタックルをかまされて、まさかの急襲に食堂の机にもんどりを打った。
『な、何す──』
『分隊長が、モブリッ……、モブリットが、早くっ! 早いから、早いから耳、どうしようって!』
『モブリット早くない。どうした。ハンジさんに何があった?』
周囲に誤解を与えそうな発言には取り急ぎ否定を入れて、モブリットは素早く彼女に向き直った。
滅多な事で、彼女がここまで取り乱すことはない。となればハンジに急を要する事態が起こったのだ。
奇行種と揶揄られることもあるとはいえ、仮にも分隊長が職務中に事故が起きたなら、兵団内がこんなに平和であるはずもなく、別の事情でした怪我ならまずは救護班が動くはずだからこれもない。班内で済ますべき事で――いや、それなら今日はずっとモブリットの代わりに補佐でついているはずのケイジから伝達があるべきだが、何故彼女がここにきたのか。ちらりと壁時計に視線をやって、モブリットは脳内に刻んだハンジと部下達のタイムスケジュールを確認する。ああ、ちょうど休憩時間だったなと合点がいった。
モブリットは内心で素早くそれらのことを確かめつつ、彼女の先導で向かった先は研究室ではなくハンジの自室で――


「……薬剤がひっくり返った弾みで混ざったらしいです。あの、副長」
閉めたドア越しに、先導してくれた彼女のおずおずとした解説を受ける。
ひとまず悪戯ではないらしい事と、ハンジ自身が無事――といえるのかどうかは置くとして――であった事に安堵して、モブリットは指示を出した。
「とりあえず人払いを頼む。俺は少し考えるから」
「了解。でもひとつだけ」
「何」
「猫耳クソカワよっしゃ!とか分隊長に無茶させたらコロス!」
「しない!」
ダンッと背中越しに激しく打ち付けられたらしい拳に反射で怒鳴る。更なる眩暈を感じて、モブリットは額に置いた手で眉間をしっかりと揉み込んだ。
するわけあるか。可愛い可愛くないという問題じゃない。
分隊長が猫耳をつけているのでもない。分隊長の耳そのものが猫耳だなんて前代未聞だ。どうすればいい。
この事態に慌てているのは同じはずなのに、発想の起点が違った部下の諫言に、モブリットは溜息を吐いた。
「大丈夫? 随分疲れてるみたいだけど」
「……疲れた俺の見てる幻覚だったら良かったんですけど」
「ざーんねんでした! 本物だ!」
「何であなたが自慢げなんです!?」
カラカラと笑いながら、ハンジが椅子を立つ音がする。床にしゃがみ込んでいたモブリットの側に来ると、両膝を抱えるようにして同じようにしゃがみ込んだ。
そんな上司をうっそりと見遣ったモブリットの視界に映るのは、何ら変わらないハンジの聡明そうな明るいブラウンの瞳と、通った鼻梁、それから髪よりもやや濃く見える焦げ茶色の毛が生えたピンと尖った耳だった。
もう本当に、なんで上司の耳が猫耳に。
それでもいつまでこうしていても仕方がない。モブリットは重たい腰を上げると、見上げるハンジに手を差し出した。
「とにかく」
「ん」
取った手もジャケットから覗く手首にも、やはり何も変わりはない。いつものハンジだ。ハンジなのに。
(猫の耳とか……)
昨日モブリットが片づけたばかりのベッドに誘導して座らせると、半眼で見下ろす。
「それ他に誰かに見られましたか」
後でおかしな噂が立てられるような事があっては困る。
もしも何らかの可能性があるならば、今の内に対策を立てて置くべきだ。
そう考えての質問に、ハンジは顎に手を当てて首を捻った。それから思い出したようにポンと打つ。
「あー、リヴァイ? でもここに来るまでにすれ違っただけだし、すんごい蔑んだ目してたから、あれ絶対私が猫耳つけて遊んでると思ったね」
「猫耳つけて大人しく遊んでてくださいよ」
「お? なになに? モブリットって猫耳好きなの?」
だからそういう問題じゃないというのに。
先程の部下の発言でも思ったが、うちの女性陣は驚くほどピンチに強いのかどうなんだ。
ベッドの端に腰掛けながら身を乗り出してきたハンジの耳が、何故か楽しそうにピクピクと前後に動いていて、口からは溜息しか出てこない。
「大丈夫だよ。たぶん。拭き取る前に同じ薬剤で実験用のマウスに試してみたら戻ったし。分量や体積の比較効果を考慮しても、後一〜二時間ってところじゃないかな。たぶん」
「……そのたぶんが怖いと思わないのがさすがですよね」
「だって怖がってても仕方ないし。変化も耳だけで他にないし」
「その耳が大問題なんですよ!?」
「まあまあ。戻らなかったら考えようよ。で? 我が班の副長さんは猫耳好きなの?」
相変わらず切り替えと決断のなんて素早い。突っ立ったまま後ろ向きな可能性を考えを拭いきれないモブリットに、ハンジは苦笑して、再度同じ質問を投げ掛けた。
ぽんぽんと横を示されて、少し間をあけて隣に座る。


例えば百歩譲って猫耳が好きだったとして。
それはシチュエーションだとかコスチュームとしての嗜好を指すのであって、本当に耳が変わって喜ぶ奴がどのくらいいるのか。現実的に考えて確率は低いとモブリットは思っている。
「別に好きでも嫌いでもないです」
「えー、せっかくだし猫プレイ楽しみたいとかないの?」
猫プレイってなんだ。
唇を尖らせて言ったハンジに、モブリットは頭を捻った。
楽しめる猫プレイ。猫が喜ぶプレイ――プレイ、つまり、ハンジさんは遊びたい?
もしかして猫耳がついたせいで、若干思考も猫寄りになったりしているのだろうか。
最近本物の猫を見る機会もなかったが、そう考えて、モブリットは眉を寄せてハンジを見つめた。
「……猫じゃらしとか用意した方が良いですか?」
「真面目か。くらえ、猫パーンチ!」
「うわっ、もしかして爪も出るんですか!?」
ぼすんと横手から繰り出された拳を脇腹に受けて、モブリットは慌ててハンジの手を取った。
薬剤のもたらしたらしい変化はてっきり耳だけかと思っていたが、まさか尻尾も生えていたりしないだろうか。素早く視線を走らせてみるが、衣服に穴もごろつきもない。ホッとしつつハンジの拳を開かせて眺め眇めつしてみたが、こちらも特段変化は見当たらなかった。
モブリットの慌てぶりに面食らったように目を開いたハンジが、苦笑しながらそっと自身の手を引き抜く。
「だから真面目かって。出ないよ。耳だけ」
それからモブリットの眼前に突き出した掌を閉じたり開いたりしてみせる。確かに短く切り揃えられた爪は、やはりいつものハンジのままだ。
ね、と笑ったハンジが前を向く。と、横顔につられてそちらを向いたはずの猫耳が、忙しなく動いているのにモブリットは気がづいた。前に横にと僅かな音も聞き漏らすまいとしているかのようで、成程と思う。
ハンジが本当に猫だったなら、好奇心旺盛な彼女の耳は、こんな風に始終アンテナを張り巡らせていることだろう。
「……すごく動きますね」
「あー、かもね。自分だとあまりわからないけど」
人の耳より分かりやすく動いているのは、さすがは動物といったところだ。
モブリットの指摘に頷いたハンジが、自分の頭上を仰ぐように天井を向いた。それでも隣り合わせた左耳は、何度もモブリットの音を拾おうとしているように、こちらにピクリと向けてはまた前を向くを繰り返している。


「本物、なんですよね」
「うん。痛覚はそのままだったから」
「自傷してみたんですか!?」
「わ──ッ」
「──」
咄嗟に通常の巨人に対する反応実験を思い浮かべてしまい、モブリットはハンジの猫耳に手を伸ばした。
少しだけ長い飾り毛のある耳の先に触れる――とはいえ、痛みを伴う程の強さは無論なく、頬を掴んで振り向かせるくらいの強さで、だ。薄い皮膚の熱を直に感じた驚きよりも、しかしモブリットはハンジの反応に驚いて、思わずその手を引っ込めた。
「え、っと……通常の痛覚実験だよ。ほら、コンパスの鋭角二点で突いてみるとかそういうのだけで――」
「──あの、すみません」
「うん? え、何が?」
僅かに竦めていた肩を戻しながらで言うハンジは、モブリットの謝罪にきょとんと目を瞬かせた。
どうやら気づいていないらしい。
モブリットは諸手を上げたポーズから徐々に膝に戻しつつ、そっとハンジの様子を窺った。
ついさっきまで全方位にピクピクと動いていた耳が、かなりピンと立っている。
猫を飼育した経験はなかったが、確か、これは集中だとか、何かを欲求している時じゃなかっただろうか。
「ハンジさん」
「ん?」
耳以外は変化のないハンジが首を傾げる。耳はやはりモブリットの方をむいたまま、時折先がピクリと動く。
そういえば普段から耳の弱い人が、猫の耳だとどういう反応をするんだろうか。
「触ってみてもいいですか」
「え」
推測を立てるより早く、するりとそんな言葉がモブリットの口をついて出た。と、ハンジではなく、ハンジの耳が先にピンとモブリットの方を向く。
まずい。これは少し、面白い。かもしれない。
「駄目なら無理にとは言いませんけど」
「いや、……う〜ん……うん?」
内心の考えをおくびにも出さず真っ直ぐ彼女を見つめていると、ハンジはしばらくモブリットの真意を確かめるように唸り声をあげながら、耳だけをやけにピンと立たせている。研究者としての本質か揶揄か計りかねているといったところだろう。揶揄が多いとバレたら全力で逃げられそうなので、モブリットも真剣な表情を崩さない。
やがてハンジは意を決したように顔を上げた。
「……うん、いいけど、ひとつ条件がある」
「魚ですか?」
「だから耳だけだっつの! 別に猫っぽい思考になったわけでも、嗜好品に変化があるわけでもないから」
そういえば猫じゃらしも否定されていたな。
ふむ、としかつめらしく頷いて、モブリットはハンジに先を促した。
「で、条件というのは?」
部屋の掃除か、それとも今の時間で溜まった事務処理の身代わりか何かだろうか。しかしハンジはその条件を提示する前に、僅かにモブリットから体を反らした。何故かジト目で睨まれる。
「……あのさ。わかってると思うけど、その、これ、今は猫耳だけど私の耳だという事を忘れてないよね?」
「もちろん」
「毛むくじゃらなだけで、ただの耳だし、性能的な変化はないからね」
「そうなんですね」
「……」
「分隊長?」
確認にいちいち頷くと、ハンジは何ともいえない表情でモブリットを見た。それからボソリと呟くように小さな声でようやく条件を口にした。


「条件。普通に触感確かめるだけなら、いい」
「普通に?」
「普通に」
「……」
「……」
若干の上目遣いは牽制のつもりか。
睨まれているのに違いはないが、おそらく無意識だろう目尻に浮かぶ羞恥の色が、モブリットの嗜虐心を刺激する。
余計な条件をくれたおかげで、普通じゃない触り方を軽く脳内で一巡させてしまってから、モブリットは頷いた。
しかし首肯までに随分間を置いてしまったせいだろう、ハンジがぐっと顎を引き、同時にあからさまな警戒を示して、ハンジの猫耳がひたりと後ろに寝てしまった。
「……知ってると思うけど、これ耳だからね!」
「はい」
「耳だよ!?」
「そうですね」
普段から感情表現の豊かな人だと思ってはいたが、猫耳のお陰で口にしていない部分まで手に取るようにわかってしまい、モブリットもつられて素直な感想が口をついた。
「あなた耳弱いですよね」
「知ってるとは思ってたけどやっぱりわざとか!」
飛び上がりこそしないものの、今度こそ完全に後ろに張り付いてしまった耳が全てを物語っている。
これが本物の猫なら、全身の毛を逆立てて、髭をピンピンに張っていそうだ。
両手で猫耳を庇うような仕種までされて、モブリットは困ったように睫を下げた。
「触るだけですよ。約束します」
こうも警戒されてしまうと、嗜虐心より申し訳なさが先に来る。というより、はっきりとした拒絶は意外とダメージが大きかった。
とん、と左胸に拳を当てて敬礼すると、ハンジはぐっと息を飲んだようだった。
しばらくモブリットの様子を窺い、ぷいとそのまま正面を向かれる。だいぶ元の位置に戻った耳も、ハンジの顔と同様、前に向けられていた。
「あの」
「……いいよ!」
背筋を伸ばし、両手を膝の上に置いたやけに姿勢の良い状態でハンジが言う。
ようやくお許しを頂けたらしいと理解して、モブリットは気づかれないようにそっと頬を緩めた。
「失礼します」
二人の距離を少しだけ縮めて手を伸ばす。ギ、と軽く軋んだ音にか、それとも動いた気配にか、ハンジの左耳がピクリとモブリットの方を向いた。その付け根にゆっくりと触れる。


「……っ」
親指は添えるだけで、残りの四本で後ろの毛を確かめるように上へと撫でる。
触れた毛の質感はしっとりとして、それでいてさらりと冷たい柔らかさが気持ちいい。すぐ下に感じられる体温はやはり思いのほか熱く、血の通った薄い皮膚があるのだとわかる。
何度か往復させて、耳の先を突いてみる。
「ふ――」
ほわほわとした飾り毛は、密生した他の部分とは違うようで少し固めの毛質らしい。粗い手触りを指で摘まんで、それからもう一度下へと撫で下ろす。ピンと立っていたハンジの耳が、モブリットの指に合わせて、いつの間にか力の抜けた柔らかさになっていた。逆の耳にも触れようと身を乗り出すと、モブリットの進行を促すように、左耳がへたりと伏せて、右耳への通路を作ってくれる。
「気持ちいいですね……」
呟いた言葉に返事はないが、僅かに頷かれたのを頭に乗せた手で感じ、モブリットはハンジの髪をくるりと撫でた。
そうして右耳も同じように耳裏を撫で上げて、親指の腹とで揉み込むように上下させる。
触れるために随分身体を寄せたせいで、ハンジとの間にあった距離はもうない。
密生した毛の意外な手触りの良さに、普段接している軍馬とは違う落ち着きを感じていると、すぐ傍からハンジが「あのさ」と声を掛けた。
「……モブリット、そろそろ……っ、いいかな?」
目を瞑り、唇を引き結んでいるハンジの手が膝の上で何かに耐えるように固く結ばれているのに気づいて、モブリットも我に返る。つい調子に乗って触りすぎてしまっただろうか。
乗り出していた身体を戻しながら謝罪の意味を込めて、ハンジの拳を左手で包む。モブリットの手の中で僅かに跳ねた拳とは違い、くにゃりと力の抜けた左耳を、名残惜しい最後の一撫でと右手をやりかけて――ふと耳の内側から動物らしく生えている白の多めに混ざった毛に気がついた。そこにもそっと指を伸ばしす。
「ぅ、ん……」
耳裏ほどの柔らかさではないが、奥に籠る熱の湿り気を帯びた質感はまた違う。
人差し指と中指でやわやわと後ろを弄りながら、モブリットは内側の毛をゆるく親指の腹で押した。
「……ぁッ」
と、ハンジが喉を鳴らして、包んでいた手も肩も小さく跳ねる。
「すみませ――」
やりすぎたかと思わず耳から手を離し、モブリットは改めて見えたハンジの表情に息を飲んだ。
固く閉じた唇を震わせながら、伏せた睫毛が零れるぎりぎりで濡れている。何かに耐えるように寄せられた眉間が艶めかしさを漂わせ、眦と頬が羞恥にうっすらと朱を刷けていた。顎のラインからきれいに頭へ向けて生えている猫耳は、先がヒクヒクと動いて、まるでモブリットの戻りを待っているかのようだ。
――これは、まずい。


モブリットは感情に忠実に流れようとする本能を理性で撥ね退けて、ハンジの両肩をぐっと押した。
突然の行為に瞬いたハンジの目から零れた涙は見ないふりで、顔を背ける。
「何。どうかした?」
「……猫耳より、にゃあと言われた方がマシですね」
「ひ、ひどいな!」
さんざん猫耳を触り倒した挙句の台詞は確かに酷い。
しかし抗議で近づいたハンジにぐるりと背中を向けると、モブリットは誤魔化しようがなくなる前に、両手で顔を覆って下を向いた。
「そうじゃなくて――」
ダメだ。ハンジの顔が今はまともに見られない。
挙動不審だろうモブリットにハンジの戸惑う気配がする。
彼女に生えた猫耳は、今は立っているのだろうか。それとも警戒。それとも――まるで蕩けるように力を抜いて、眦を赤く染めて震える彼女の心の内を代弁してくれているのか――
「――耳以外にも触れたくなるじゃないですか」
猫耳があんなに正直だなどと知っていたら、二人きりにはならなかった。
ダメだ。耐えろ。部下の彼女とも約束したんだ。殺される。
「えー……と、じゃあさ、モブリット」
そんな葛藤を知る由もないハンジがモブリットの背中にそっと声を掛けた。
ギ、とスプリングの軋む音もして、距離を縮めたのだとわかる。とんとん、とハンジの指先が遠慮がちにモブリットの背中を叩いた。
「……何です?」
振り向かないまま問いかけると、肩口に急激な重みを感じて、モブリットは覆っていた両手を離した。
顎を乗せられているのだとわかったのは、耳朶にハンジの唇が触れたからだ。
ちゅ、と音を立てた口づけはわざとだ。
ぎぎぎ、とゆっくり顔を向けると、ピンと立てた猫耳と楽しそうに弧を描くハンジの瞳がそこにある。
「猫耳プレイ、やっぱりしとく?」
「……………………しときましょうか」
ダメだ。そうだ。滅多にないしな。検証しないと。
ハンジの提案にそう言って、モブリットは擡げた欲望を迎えてやろうと心に決めた。
と、肩から胸の前に回されたハンジの腕が、きゅっとモブリットを引き寄せた。そのまま勢いよくベッドの上に押し倒される。
「にゃ!」
「わ――ッ!」
ボスンと鈍い音を立てて沈んだ身体に擦り寄るように甘えるハンジに、モブリットは理性のくびきがあっさりと煮干しに変わった音を聞いた。


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2/22-2/26までは(無理矢理でもなんでも!)猫の日だと聞いて!
この後戻ってきたおかっぱのあの子に「約束したのに!副長最低!」とか詰られて「破ってない!」「嘘吐き!」「無茶はさせてない!」「……いっぺんしねよ!」とか言われてるとかわいいですねーと妄想してました。
無茶させられたのはモブリットでも大変おいしいかなと。
とても楽しかったです!
耳弄りシチュ書いてもいいよといってくださったのあさん、ありがとうございましたー!わっほい!