3.「ああそうですか」




「じゃあ、オーストリアさんは私の胸さえあれば、どーでもいいっておっしゃるんですね!」
「――そんなこと言っていないでしょう」
「言ったも同然です! だって私が痩せて貧乳になったらイヤって――」
「言ってません! 第一、貧にゅ……ゴホン、年頃の女性がそのような言葉を遣うものではありません、ハンガリー。慎みを、」
「私、貧乳のどこが下品な言葉なのかわかりません。すみませんね、どうせ野蛮な民族ですよーだ!」
「ハンガリ……」
「オーストリアさんは女心がわからなさすぎですっ」
「――私が? …ちょっ! な、何ですか。泣くことないでしょう!? ハンガリー!」
「オ……オーストリアさんなんて、格好良すぎるからわからないんですっ」
「は!?」


「オーストリアさんみたいに素敵なら、女の子なんて選り取り見取りじゃないですか。それなのに私はこんな……。こんな不安な気持ち、わかんないんですっ。だから私、一生懸命、せめて体だけでもって思ったのに、巨乳じゃないとダメだとか……」
「――ちょっ、違います! 巨にゅ……ゴホゴホッ、む、胸の大きさなど関係ありません!」
「だって」
「だってじゃありません。良いですか? お聞きなさい」
「…はい」
「痩せてようがふくよかだろうが、貴女が貴女であれば良いんです。フランスじゃあるまいし、外見だけで選り取り見取りだなどと、そんなくだらないことを心配せずとも私は――」
「ウソ」
「ハンガ――」
「ウソです! 男の人はそう言って、どうせ若くて綺麗な女の人が大好きなんです! 私がオバサンになったら、若い女の子に走っちゃうんです……。そ、そうならないように、今から最大限の努力をしなくちゃ!」
「捨て…っ!? そんなわけないでしょう!?
 ……ああそうですか。では、ハンガリー。貴女は私が中年になったら、私を捨てる気なんですね?」


「は――、え、ちょ、そんなこと言ってな……」
「私が白髪まじりになって、皺が増えて、下腹部にたるみが出てきたら、若い男に走――」
「るわけないじゃないですか!! 何でそーなるんですか!? オーストリアさんなら、どんな姿になっても、世界で一番格好良いに決まっています!」
「そんなことを言って、そのうち私の衣類は、分けて洗濯するように……」
「なりませんってば! なるわけないじゃないですかっ。見くびらないで下さい。私、どんなオーストリアさんでも」
「どんなハンガリーでも」
「…………あ」
「分かりましたか?」
「………………は、はい。すみません、でした…………」
「よろしい。もっと私を信じなさい」



「ヴェー……誰か来てー……」



END


食卓にて。
忘れられたイタリア。
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