ぬくもりからロマン飛行(01)




1.


 ぺちぺちと頬を叩く音が微かに聞こえる。その度に頭が揺れるから、そうされているのが自分だとわかる。
 けれど痺れたように感覚はない。

「……メさん、カナメさん、目を開けてください。起きて」
「め、さー、くん――……、も、むり……」
「無理じゃない」

 薄く意識を戻したカナメに、メッサーの容赦のない声が聞こえた。言いながらまた何度も頬を軽く叩かれる。
 大きな掌が乱暴にではなくひたすら自分の頬をなぞる仕草に、カナメはどうにか瞼を押し上げた。メッサーのホッとしたような表情が見える。

「すぐに助けが来ます。もう少しです。諦めないでください」
「ん……」

 けれど襲ってくる睡魔の前ではその姿さえすぐに見えなくなってくる。
 かわりに自分を抱えるようにして抱くメッサーの胸に身体を摺り寄せて目を閉じると、すぐに掌が頬に触れた。

「カナメさん、俺を見て。見てください。お願いです。わかりますか」

 必死の声にカナメも意識を奮い立たせるようにして、どうにかまた目を開けた。
 ふるふると小さく頭を振って、意識を覚醒させようと努力してみる。眠い。寒い。
 だがメッサーが今にも泣きそうな顔で自分を見ている。
 このまま眠ってしまったら彼を悲しませてしまうのだとわかった。

「め、っさー、くん」
「そうです。ちゃんと見て。カナメさん、頼む。俺を、――……置いて行かないでください。見て」
「……っさー、くん、メッサーくん、メッサーくん……ッ」

 泣かないで。大丈夫。私はちゃんとここにいる。
 そう伝えるつもりで、カナメは力の抜けていた腕を持ち上げメッサーの頬に触れさせた。指先に温かな彼の体温が沁みてくるようだ。
 懸命に名前を呼ぶと、メッサーは眉を下げ、カナメをぎゅっと抱き寄せた。
 温かい。
 寒さでかじかんだ身体に溶けて、一つになれるような気がする。

「そうですカナメさん。もう少しです。頑張りましょう」

 寝ないで、どうか、もう少しです、――そう繰り返してくれるメッサーの声に励まされて、カナメはこくんと頷いた。



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2017.01.01のお年賀コピー本としてecさんに送らせて頂いたメサカナssになります。
リクエスト頂いた内容は「寒いところで暖を取るメサカナ」(すごい端折ったw)的なノリで書かせて頂きました。
多分意図されていたものと180度違う方向に行ってしまいました///