ONLY ME 〜forth sentence〜 ←BACK NEXT→
「お前のせいでリザが帰った」 「あー…と…可愛い反応だな、彼女」 「あんなの……初めて見たぞ……なんなんだ一体……」 あそこで恥らうなんて反則だ。あの表情は可愛すぎる。やばいやばいやばい。 「ロイ?」 口元を手で覆い、リザの去った方角をじっと見つめるロイにヒューズが声をかけた。 ヒューズの言葉に反応も返さず、ぼそりと呟かれた言葉に瞠目する。 「……かなり参ってんだな、リザちゃんに」 「うるさいっ。リザのあんな顔、前代未聞だ!」 「前代…………照れるとか拗ねるとかするだろよ、普通」 付き合ってんだし。 暗にそう告げたヒューズの台詞に、ロイは緩慢な動作で冷蔵庫へと近づくと、扉を開けてビールを二本取り出した。 栓を開け、片方をヒューズに渡す。 「彼女は至って普通だよ……どんな時でも」 くっと嗤って、ボトルを呷った。 確かに、いつも冷静沈着な彼女だが、怒りもするし笑いもする。 それが極めて表情に出にくい性質であることも熟知しているし、それでも普段に比べ、 ロイの前ではリザの表情が豊かになっているという自負はあった。 他愛のない話をする時、言葉遊び、セクハラ(ロイにそんなつもりはさらさらないが)。 時と場所にもよるが、それなりに甘い表情で応えるときもある。 なのに最も互いを曝け出すはずの時に、必ずリザは『普通』に戻ってしまう。 まるで心でロイの侵入を否定するかのように。 「だからさっきみたいな彼女の顔は貴重なんだ」 惚れるなよ、と付け足して普段通りを演出するがぎこちない。 ロイの皮肉めいた物言いの中に潜む翳りに、ヒューズは顔を顰めた。 どんな時に普通でいるのか、ロイの自嘲をのせた表情が全てを物語っている。 「参っているのは俺だけらしい」 「――お前、馬鹿か」そんなことはあり得ない。 はあっ、と大きく息を吐いてヒューズは頭をガシガシと掻いた。 どこからどう見れば、リザがロイを想っていないという結論に達することが出来るのか、 ひねくれ過ぎた親友がいっそ哀れで泣けてくる。 仮にもあのホークアイ中尉が、どうでもいい男に対して頬を赤らめるだなんて芸当を 上官命令でもするものか。 それに第一 『どんな時でも普通』 だなんてあり得ない。 彼女はいつだってロイの側に控え、ロイのことを考え、どうすればロイが最短の方法で彼の進むべく道を突き進むことが出来るのか、そればかりを考えているではないか。 それが普通だなんて、何て贅沢な野郎だまったく。 その心境でロイに抱かれ、どうして彼女が普通でいられる? 抱かれることを拒まずにロイの行為を受け入れて、 それでも敢えて 『普通』 を貫き通そうとするならば、その彼女の心中は、おそらくロイに起因する。 身を呈しても護りたいロイに抱かれる自分。 女になってはいけないのに、リザの女を求めるロイ。 拒まないのは、それを求めるリザが確かに存在するからだ。 しかしいきなりなヒューズの発言に、ビールを喉奥に流し込みながらロイが睨んだ。 「馬鹿と何とかは紙一重って言うけどホントだな。お前バカだわ」 「…ヒューズ」 「そんなときに普通でいられるはずがねえんだよ。お前だってそうだろが。 大っぴらに拒絶や快感を曝け出すことが出来なかったとしても、絶対普通ではいられねえんだよ」 それこそ当たり前じゃねえの?というヒューズに、苛立ちにも似た何かがロイの中を駆け巡った。 「お前は――お前はリザを知らない」 何が言いたい。そう凄むロイの視線に怒気以外の何かを感じ、ヒューズは更に言葉を重ねた。 「本気で拒絶するなら暴れる噛み付く殴り倒す。 ……ああ、リザちゃんならブローニングぶっ放すか。 ともかく、だ。忠誠心だけでお前に抱かれるほど、あの子はやすくねえだろ」 「…………」 「絶対に普通でいられるはずがねえんだよ。大体、何が普通だ。 喘ぎ声一つ上げないのか?濡れない?それともキスしたら舌でも噛み切られたか?」 「……そしたら俺は死んでるだろうが」 眉間に皺を寄せて思いきり不機嫌そのものの表情で、ヒューズを睨む。 だがその実、リザの態度を反芻してるのが見え見えな視線だ。 ヒューズを捉えているのではないその視線に、さらに言った。 「なら、あの子はお前を受け入れてんだろ。 んなことにも気づけない男じゃ、ロクなもんじゃねえな、ロイ」 「だが……なら、どうして彼女は俺を見ない」 求めない――? 酔いが回っているのかもしれない。 馬鹿なことを口走ったとロイは思った。 自分でも馬鹿みたいに弱気な声が耳に届いて、驚いた。 「……あ〜〜ッ!何でお前なんかにこんなこと話さなきゃならんのだ!!」 それを払拭すかのような大声で吐き捨てて、胸元を緩める。 空きっ腹にアルコールはよろしくない組み合わせだ。あつい。 苛立たしげに空になったボトルをテーブルに叩きつけたロイの視線に、 我に返った気恥ずかしさが見え隠れしているのを見つけ、ヒューズは内心で苦笑した。 (可愛くなっちゃってまぁ) 口に出して言えば、本気で怒り出しそうな目の前の男に胸中でそう語りかける。 「目は口ほどにものを言う、だぜ?ロイ」 酒の所為か、据わった目つきでわけがわからんと呟くロイに、 「……察しの悪い男だよなぁ、お前。リザちゃんに同情するぜ」 こんな不出来な男をよくも今まで見捨てないできてくれたもんだ。 どうやら彼女も相当コイツに参ってるらしい。 「見られちゃマズイ感情を隠してるんだろうさ」 それでも決してロイを拒まず抱かれるのなら、つまりはそういうことなんだろう。 ただ彼女のことだ。 ロイのことを一番に考えすぎて、枷になる自分を怖れている。 「俺が女でもやっぱコワイわ、お前」 「怖い?俺が?」 瞠目しているロイを目の端でとらえ、ヒューズは飲みかけですっかりぬるくなってしまったビールの残りを一気に呷った。 「こわいぜ〜。抱いた女はポイ捨てするのがご趣味のマスタング大佐は」 「人聞きの悪いことを言うな!」 「なんにせよ、」 空いたボトルを持って立ち上がると、冷蔵庫の扉を開けて勝手に食料を漁り始める。 見事なまでに何もない。 「安心させるのも男のオツトメじゃねーの?」 それでグレイシアは満足してくれるぞ、と扉を閉めて奥の方に潜んでいたハムをかじった。 ――――― −−−−−− ――――――― 珍しく一度も脱走を図らない上官を訝しみながら、 リザは処理済の書類を受け取って決裁印を確かめる。 この分だと急な召集でもない限り、定時きっかりに上がれそうだ。 「めずらしいっスね」 「上官侮辱罪を適用しない上官で幸せだろう、ハボック」 後ろで揶揄するハボックに、ロイが指を擦る仕草で睨みつけるのを横目に思考を廻らせる。 (誰かと約束は……なかったわよね?) デートの予約でさえも一ヶ月先のロイのスケジュールを把握してるリザは、頭の引出しを閉じた。 たまにはこんな日もあるのかもしれない。 リザはぱらぱらと書類を捲り、 「――――」 そこに挟まれた手書きのメモに、思わずロイを仰ぎ見た。 「書類に何か不備でも?ホークアイ中尉」 「…………いえ……提出してきます」 小さく礼をして執務室を出る。 奇妙な間にハボックがその背を見送ってロイに話し掛けた。 「どうかしたんスかね、中尉」 「珍しく書類が完璧で驚いたんじゃないか?」 「……自分で言ってて虚しくないスか、大佐」 「………………」 残された男二人の執務室。 ハボックの最もなツッコミに、ロイは眉根を寄せて唸り声を上げた。 ――――― −−−−−− ――――――― 「何を考えてるんですか、貴方は!」 玄関先で仁王立ちのリザに出迎えられて、ロイはふと表情を緩めた。 「朝帰りした亭主の気分だ」 「経験がおありですか、大佐」 「気分だよ気分。君も新婚の気分を味わえてるかい?」 「お言葉ですが。新婚で朝帰りは離婚ものかと」 「……言葉のアヤだ」 水を打ったような響きで返される言葉に、段々と呆れの色が濃くなるのを感じ、 ロイは寝室へと歩を進める。 その後ろにリザが黙ってついて行く。 ジャケットを脱ぐと椅子にかける前にリザが受け取り、 皺にならないようにハンガーにかけてクローゼットへ仕舞った。 やはり新婚の気分だ、とほくそ笑む。 サイドテーブルに置かれたままの赤いピアスを見つけ、片手でそれを弄びリザに示した。 「これだよ。君の忘れ物」 「でしょうね」 ロイの行動が読めず、リザは眉根を寄せたまま適当な相槌を返した。 「それよりもこれはどういうつもりですか」 「何?」 「なに、じゃありません。こんなもの、誰かに見られたらどうするおつもりですか」 ポケットから出した小さな紙切れを、ロイの面前に突き立てる。 それは昼間、ロイがリザに渡した書類に挟まれていたもの。 見慣れたロイの筆跡で書かれた文字。 『リザ。仕事が明けたら家で待ってて。ピアスを渡す』 ご丁寧にロイの署名もついていた。 あきらかに上司と部下のメモではない。 こんな妄想をかき立てる格好の餌を無闇に渡して、どこかで見つけられたらどうするつもりだ。 副官との淫らな関係。 ゴシップ紙の三面記事にデカデカと載りそうな内容だが、ロイにとっては致命傷になる。 それがわからないほど無能ではないと思いたい。 「燃やして下さい」 存在を。 そういって差し出された紙切れから視線を戻し、自分を睨めつけているリザを見て、 ロイはなるほど、と思った。 「目は口ほどにものを言う、か」 「は?」 納得して一人頷くロイに、リザが僅か顔を傾げる。 「昨日ヒューズが言っていたんだ」 「ヒューズ中佐が?」 ――何の話だかさっぱりわからない。 余計に眉間の皺を深くしているリザの手からメモを抜き取り、発火布を弾く。 一瞬で跡形もなくなったそれに、安堵の息を吐いたリザに、 「君は余計なことを考えすぎなんだ」 「貴方は考えがなさすぎです」 手袋を脱ぐと、サイドテーブルの上に置かれたピアスの上に放り投げ言うロイに、 リザが即座に反発した。 「考えてるさ」 意外に真剣な声で返され、少し戸惑う。 「今までも、これからも」 「……大佐?」 「後腐れのない女関係を咎められて、失脚するような馬鹿な真似はしない」 ――だからリザとの関係も気にするなとでも? 女関係において抜かりのないロイであることは、リザが一番よく知っている。 軍関係者においては特に、だ。 しかしはっきりとそう告げられてリザの胸の奥がツキンと痛んだ。 無意識に視線を逸らし、下を向く。 「君を抱くことは――」 後腐れがないから平気。 続けられるであろう台詞に、副官としてのリザは安堵し、 だがリザ自身はくず折れそうになる心を叱咤した。 しかし、 「後腐れの覚悟ナシに求めるほど、最低な男じゃないつもりなんだが」 「――――」 何を言って――…… いつの間に目の前にきていたのか。 ロイの口から紡がれた言葉に、放心していたリザの反応が一瞬遅れた。 その隙を突くかのように頬に触れた手によって顔を上げられ、ロイの視線とかち合った。 見たらダメだ。 「――…やッ」 「遅い」 小さく悲鳴をあげたリザの口をロイが塞ぐ。 啄ばむように角度を変えて。軽く何度も。 下唇を甘噛まれて、思わず嬌声が漏れそうになった。 それを拒み、逃れようとするリザの顔を両手でしっかりと固定すれば、リザの手がロイの胸を押し返す。 「ちょ…たい、ふぁ……んッ」 制止の為に開かれた口腔の隙を尽き、ロイの舌が侵入した。 熱い熱から逃げ惑う彼女を、捉えて絡めて離さない。 徐々にロイの胸を押し付ける掌が弱まり、蕩けそうな刺激に震える手でシャツを掴み始めるリザを確認して、そのままベッドへ押し倒した。 漸く唇を解放し、そのまま彼女の顎へと下り、鎖骨をなぞる。 ねっとりとした感触にリザはシーツをしっかと握り締めることで体が戦慄くのを必死で抑える。 無遠慮な熱が触れたロイの舌先から、リザの体に痕を散らす。 スプリングが軋み、ベッドサイドの発火布がピアスと一緒に床へ落ちていくのを、リザは熱に浮かされた視界の隅で認めた。 リザが羽織っていただけのカッターシャツはいとも簡単に広げられ、中のキャミソールもたくし上げられる。慣れた手つきでリザの背中に手を回すと、締め付けていたホックを外し、上へと押しやった。完全に脱がされないままで、現れたたわわな胸にロイの指先が触れる。 「……あっ」 しこる先端に口付ければ、頭上から聞こえるのは甘い吐息。 舌先で嬲り、もう一方はもみしだくと、さらに張り詰め主張をはじめる。 「や、やめ……てくだ、さ……」 リザの喘ぎにも似た懇願に耳を貸さず、ロイは空いているもう一方の手で腰骨をなぞり、スリットから覗く太腿に忍ばせた。 僅かに身じろぐリザに気づかない振りで、白い大腿に装着されたガンベルトを取り払う。 ごとりと重い音が室内に響く。 「大、佐…ッ、ダメで……ん!」 圧し掛かり、リザの間に片膝を立ててその口を塞ぐ。 紡がれた拒絶の声は、音を立ててロイの中に飲まれていった。 「リザ……」 「――あッ」 胸元をきつく吸い上げ紅を散らし、大腿を這わせていた片手を付け根に向ける。 秘部を隠す下着の間から指を滑り込ませれば、淡い茂みにロイの手が触れた。 そろりと節くれ立った中指を入り口にあてがい表面だけをなぞるロイの動きに、震えのような感覚がリザを襲う。 「や……っ、ん…あッ」 いつもと違うロイの行為に、リザの腰が無意識に揺れた。 優しすぎる刺激に、リザの女の部分が熱く焦れる。 ロイは胸をもみしだく手の動きを止め、きつく閉じられたリザの眦から零れ落ちる涙にそっと口付ける。涙の軌跡を舌先で舐めとって、そのまま耳へと下る。 下腹に置かれた手がくちりと淫猥な音を立てて浅い部分に到達した。 初めて直接触れられるというのに、リザのそこは十分すぎる熱を持っている。 耳朶を震わされロイから与えられる刺激のもどかしさに、思わずもっとと叫びそうになる咽喉をヒクつかせた。 「くっ…は、ぁ…っ!」 枕元のシーツを指が白くなるほど握り締めてくいしばる。 入り口がひくりと動いてロイを求めている自分の体に痴態に気付いてはいたが止められない。 それを知りながら、ロイは第一関節のみを緩く挿入しつつ、時折中でくっと曲げる。 たったそれだけで、リザの蜜口はあられもなく濡れそぼった。 もっと奥へと差し込むように蠢き始めた肉壁を感じて、ロイは指を引き抜いた。 ぬちゃ…と白く濁った体液が糸を引いて、リザの体を振るわせる。 しっとりと濡れた己の指を口に含み丹念に舐め取る。 その音に耳を塞ぎたい衝動に駆られて、眉根を寄せたリザを一瞬見下ろし、まだ固く閉じられた瞳に触れ、キスを落とした。 頬をなぞり抱きしめる。 「――……たい、さ…?」 中途半端に肌蹴られたリザの胸に、男の厚い胸板が押し付けられる。 互いの体は熱を帯び、鼓動が早い。 普段あまり見ることのないロイの鍛えられた胸元に抱かれているという事実を感じて、 不安と歓喜が綯い交ぜの複雑な心境でロイを呼んだ。 「本気で嫌なら逃げていい」 ――――こんなところに逃げないで。 シーツを握り締めたままだったリザの手にロイの手がそっと触れる。 そのまま少しだけ上半身をずらして、リザの耳元に囁きかけた。 「違うなら――……」 求めて欲しい。貪欲に。 他の誰でもない、ロイ・マスタングというただの男を。ただ只管に。 触れた指を一本一本優しく解き、震える指先に口付けて 懇願するような声音が リザの脳内をふるわせた。 今ロイを見てはいけない。 そう思った。 見たが最後、戻れなくなるとリザの本能が警鐘を鳴らしている。 だがロイの口から絞り出すように囁かれた言葉があまりにも儚げで、 理性を裏切りリザの手がロイに伸びる。 振れたリザの手に縋るように頬を押し付け、伏していたロイの瞳がゆっくりとリザに向けられる。 「――――あ……」 合わせてしまった。 ぬれるロイの視線は、情けないほどの不安と情欲に塗れた男のそれで―― それが誰に向けられたものかなんて、合わせてしまえば疑う余地もないというのに私は―― ――――目は口ほどにものを言う? ああ、そうですね。ヒューズ中佐。 それなら今の私はどんな目をしているんでしょうか。 「……リ――」 求めることも求められることも必要以上に怖れていたのは二人とも同じ。 沈黙に口を開きかけたロイの頬を引き寄せて、呼びかけの名前を飲み込んだ。 浅く長い口付けだった。 ロイの黒髪に何度も指を梳き入れ、頬へも愛おしげに触れる。 「……いいのか?」 ゆっくり離れた唇が、しかし近すぎる距離でロイが問う。 伏せた瞳がゆるゆると、だが確実にロイの瞳を見据える。 そこにともるリザの感情は―― 「――ッんぅっ!」 刹那感じた衝動を抑える術をロイは知らなかった。 リザの与えたそれとは比べ物にならない激しさで、ロイは口腔を犯す。 シーツに広がる金糸の波をめちゃくちゃに掻き乱して、乱暴に蹂躙する。 息苦しさに喘ぐ間も与えず押し付ければ、 空気を求めるかと思われたリザの口唇が押し返された。 ロイの髪に手を差し入れて。 もっともっととせがむように。 こんなキス――頭が痺れてどうにかなってしまいそうだ。 「ッは……」 肩を上下させて漸く離れた二人の間を銀糸が伝う。 それを指の腹で軽く拭い、存在を確かめるようにリザに触れた。 荒く息を吐きながら、挑むようにゆらめく濡れた視線がロイを見つめる。 「どうしてほしい?」 覗きこみながらのロイの問いに、リザは体の奥がカッと熱くなるのを感じた。 自分を移すロイの漆黒の瞳の中に、熱く滾る情欲が宿っているのを確認して、リザはゆっくりと視線を閉ざす。 だがそれは、リザの本心を隠すためでも拒むためでも既になく。 互いに求めて止まないことを、いやというほど見せ付けあってしまったから。 「リザ」 ゆるゆると伸ばされた手は、シーツではなくロイの首元へ。 しっかりと抱きしめ、離さないでと縋りつく。 「貴方が欲しいです、大佐」 ロイの耳朶に口付けて、熱い吐息を流し込む。 吐息だけで殺されるかとロイは思った。くらくらする。 乱れた着衣の下、脱がす手間も惜しい。 もういい。 何もかも。 このままで。 欲しい。 ショーツの隙間に再び手を差し込めば、忍び込んだロイに何の抵抗もなく絡みつく媚肉を確かめて、はちきれんばかりの自身を取り出す。 リザの膝を折り、そこに先端をあてがえば、先走りの液と相俟ってぬちゃりと淫猥な音が寝室に響いた。 触れ合っているだけで、異常な感情のボルテージが上がる。 首に回していた片手を解くと、ロイが入りやすいように腰を浮かして陰部を覆うショーツを横に押しやった。その瞬間にロイを掠める。 どくどくと内部から脈打ちリザを求めるそれが愛しい。 「――くッ」 微かに触れた刺激に、本気でヤバイ。 ベッドの上には乱暴に組み敷いた女、シャツの前だけ肌蹴た男が馬乗りで彼女を押さえつけ、 ロングスカートから伸びたしなやかな足を割っている。 見ようによっては強姦シーン。 だが。 「――ふ…ッああ…ン、いっ……たいっさ、あぁ!」 止まらない欲望を最初から激しく突き上げれば、きつく吸い上げるリザの媚肉。 甘い嬌声を上げてしなやかにきつく縋りつくリザの腕。 挿入に合わせ、より深い結合を求めて腰が揺れる。 何もかもが互いの情熱を膨れ上げる。 「リザ、リザ、リザ」 「は、い…ッん!あ…も…ッ」 衣擦れの音、打ち合う肉壁。 掻き抱いて、その唇を貪って、咽喉に鎖骨に痕を散らして。 汗に濡れたロイの髪を掻き乱していたリザの手が、高まる絶倒に縋るものを求めて、その背中へと移動する。 「あ、やッ…んぅッ!あ…大、佐ぁッ!!」 「――リ、ザッ」 背中にチリと痛みが走った。 初めての感覚に、思考が全ての動きを放棄するかのようだ。 絶頂に失神するほどのエクスタシーだなんて、女の専売特許だと思っていたのに。 その刹那、きゅうと締め付けが強くなり、銜え込まれた先から解放を促される欲望。 はあはあと荒く息をつき、余韻に震えるリザの体を強く抱きしめ、 酸欠気味の脳内に久方振りの新たな空気が注がれるのを感じていた。 ONLY Me >>> last